Concept
誰もがかかりうる感染症
感染症は、私たちにとって非常に身近なものです。
世界規模で見ると、年間の死亡者数の3分の1が感染症によるものであり、日本でも悪性新生物、心疾患、脳血管疾患に次ぐ第4位の死亡原因となる肺炎は感染症です。
自然に治癒するものもあれば、命に係わる重篤な状態になるものもあり、感染症の種類や患者の体調や体質によってさまざまですが、誰もが罹患しうる可能性をもっています。
これは同時に、全国各地の病院や診療所の医師が感染症を診察する機会に直面することを意味しています。
感染症は適切な診断と治療によって救命できる場合が多い上に、感染症を発症する際には急性のものが多いために迅速な対応が重要となってきます。このことから、感染症に造詣のある医師が全国の医療機関に常在していることが望ましいことは明らかです。
感染症専門医の実情
しかしながら、現在の日本国内の感染症専門医(認定者)は1691名*(2022年4日15時点)に留まっています.
全国で約8000の病院があり、その中でも400床以上の病院は 800施設ほどです。このデータから単純に計算して、大きな病院に感染症の専門医が2名しかいないという現状が見えてきます。
私たちの生活、そして医療業界も大きく変えた新型コロナウイルスの罹患者数は900万人を超えていることからも、圧倒的に医師の数が足りていないことが分かります。
まして、感染症の疑いがある患者は病院だけでなく診療所規模の医療機関にも診察を受けに訪れます。すべての臓器において感染症が存在します。多くの医師に基礎的な感染症と抗菌薬の知識が求められていると言えるでしょう。
*一般社団法人 日本感染症学会ホームページより
薬剤耐性問題の深刻性
感染症診療における実情もさることながら、薬剤耐性(Antimicrobial resistance)は、人類にとって非常に深刻な問題であり、年々広がりを見せながら進行しています。
毎日約30%もの患者様に不要な抗菌薬が処方されていると言われています。さらに、不適切な抗菌薬が選択されたり、不適切な投与量設定となっていることも少なくありません。
薬剤耐性は、耐性菌の増加や、患者様の予後悪化、抗菌薬による副作用の増加、医療コストの上昇などにつながります。
薬剤耐性の解決のために、世界的に“抗菌薬適正使用”が推奨されています。不必要な抗菌薬は処方せず、必要だと診断したら適切な抗菌薬を適切な量・投与間隔・投与期間で投与することが重要です。しかし、医師は自分が使い慣れた抗菌薬を処方しがちです。
正しい診断を行い、正しい抗菌薬処方を実施するためには、日々の診療の中で、感染症に関する情報を素早く手に入れることが一番の対策となると考えています。